会社の部署内や家庭内でデータの共有にNASを使用されている方も多いのではないでしょうか。NASはパソコンやタブレット、スマートフォンなどの異なる端末から同時にフォルダやファイルへのアクセスができ、同じタイミングで使用やデータ保存も可能となる便利な記録装置の1つです。その一方でNASに接続できない・アクセスができない・起動しないなどのトラブルが発生してしまった時には一人だけではなく複数人に影響が出てしまい、業務への支障が大きくなってしまうことも起こりえます。ここでは、NASに接続できない・データにアクセスができないトラブルが発生した時に早く問題が改善できるよう、エラー内容や対処方法などを紹介していきます。
NASとは
NASとは、Network Attached Storage(ネットワークアタッチドストレージ・ネットワーク接続ハードディスク・ネットワークに接続された記録装置)を略してNAS/ナスと呼ばれています。NASはネットワーク上で複数のパソコンやスマートフォン、タブレットなどの端末から直接、接続を行う事やデータを共有する事が可能な機器で、会社内や家庭内で複数人が同時に使用できる外付けハードディスク(HDD)のことです。接続は無線でも有線でも可能でネットワークHDD・ファイルサーバーと呼ぶ人もいます。
NASにアクセスできない際に生じる症状例
NASにアクセスできない際には下記のような症状が発生します。
- NASが認識しない・起動しない・反応しない
- ファイルやフォルダにアクセスができない・開かない
- エラーコードやエラーメッセージが表示される
- データの読み込みやコピー、移動ができない
- パソコン上でアイコンは見えていてもフォルダ内のデータを見ることができない
- NASから異音がする・ビープ音が聞こえる
- 管理画面にアクセスができない
NASにアクセスできない時に注意したいこと
NASにアクセスできなくなった、トラブルや症状が出て使えない時には下記のような事は行ってはいけません。データが消える事や取り出しができない事態に陥ってしまいます。
- 通電し続ける
- 電源の入り切りや再起動を繰り返す
- USBケーブルやACアダプタの抜き差しを繰り返す
- ケースからHDDを取り外す
- 複数のPCに接続する
- 復旧ソフトを試す
- 修理に出す
アクセスできない時の対応方法1.
使用していたWindowsパソコンからネットワークドライブに接続を行うための情報が消えてしまった際にNASにアクセスできない・接続できないといった症状が発生します。Windows10、11のパソコンでNASのトラブルが発生した際には下記の順番で確認・対応していきましょう。
- IPアドレスを確認
- NASの中のファイルを開く・中のデータに接続する方法(急いでいる方はこの方法を試してみましょう)
- Windows10、11のパソコンの設定を変更・Windows資格情報にNASを登録
- Windows10、11のパソコンからNASにアクセスできるかを確認
※無理は禁物です。NASにアクセスができなくなった際には内蔵HDDが故障したことが原因で症状発生に繋がっていることが多く、確認作業を進めることで状態が重篤化し、余計な操作や作業を進めなければ復旧ができたものが復旧不可能な状況に陥ってしまうことも起こりえます。
1.IPアドレスを確認
Windows Updateの更新プログラムを更新した際に使用していたWindowsのパソコンの設定情報(ネットワークドライブに接続を行うための資格や情報)が消えてしまうとNASにアクセスできない状況が起きてしまいます。新たにネットワークドライブに接続するための資格(接続)情報を登録し直せば問題なくアクセスできるようになることがあります。
- サーバー機器が起動していることを確認
- ネットワークに接続されていることを確認
- IPアドレスを確認
(Web設定画面やサーバー購入時に付いていた管理ソフト・例えばNAS Navigator2などを使用しましょう)
2.NASの中のファイルを開く・中のデータに接続する方法(急いでいる方はこの方法を試してみましょう)
- エクスプローラー→ネットワークを開く
- アドレスバーが表示されたらバーの中に1.で確認したIPアドレス「\\ IPアドレス」or「\\ サーバー機器のネットワーク識別名」を入力→enterをクリック
- 共有フォルダ等が表示されていることを確認して作業完了です。
3.Windows10、11のパソコンの設定を変更・Windows資格情報にNASを登録
- 上記1.でIPアドレスを確認
- Windows10、11のパソコンの設定を変更
- コントロールパネル→ユーザーアカウント→資格情報マネージャー→Windows資格情報→Windows資格情報の追加
→資格情報を入力(インターネットまたはネットワークのアドレス欄に確認していたNASのIPアドレスを入力・ユーザー名・パスワードを入力)→OKを押して完了です。
下記4.と5.は補足になります。登録を行いたい方は進めましょう。
4.この登録画面ではIPアドレスの他にサーバー機器のネットワークパスの登録も可能です。
5.Windowsのネットワークドライブとしてサーバー機器の中のフォルダを割り当てている際にはその割り当てているパスをこの資格情報欄に登録を行うことも可能です。
4.Windows10、11のパソコンからNASにアクセスできるかを確認
- 上記1.3の順でWindows資格情報の登録を行った後、NASにアクセスしてみましょう。
- パソコン画面左下のスタートボタン→ファイル名を指定して実行をクリック
- Windows資格情報に登録を行ったIPアドレスを入力
- 入力が終わったらOKボタンをクリック
- NASにアクセス→ネットワーク内→共有フォルダの表示を確認して作業完了です。
アクセスできない時の対応方法2.
上記方法を試してみて、うまくいかなかった際には下記方法を試してみましょう。
- パソコンがNASをネットワーク上で認識されているか・pingコマンドを使う方法
- ネットワーク設定を確認・プライベートネットワークへ変更(急いでいる方はこの方法を試してみましょう)
- ファイル共有のプロトコル・SMB(Server Message Block)を確認→SMB1.0設定が無効になっていたら有効へ
- Functionから始まるネットワーク関連サービス(Windows10、11 のサービス)の設定を変更
- IPアドレスを固定(競合している場合は解消しましょう)
- Windowsを最新の状態に(Windows Updateを行う)
1.パソコンがNASをネットワーク上で認識されているか・pingコマンドを使う方法
・NASのIPアドレスを固定している方
・IPアドレスの数値がわかる方
・パソコンの操作に慣れている方向け
※難しく感じられる方や上記に該当されない方は2.へ進んでください。
- スタートボタン(Windowsボタン)→Windows Powershellをクリック
- pingコマンドを入力(ping NASのIPアドレスを入力)
- 応答があればパソコンがネットワーク上でNASを認識できているとわかります。
- 応答が無い時には2.へ進んでください。
2.ネットワーク設定を確認・プライベートネットワークへ変更
パソコンのネットワーク設定が「パブリックネットワーク」or「プライベートネットワーク」になっていることを確認しましょう。
「パブリックネットワーク」になっている際にはネットワークから隠れてしまいます。「パブリックネットワーク」→「プライベートネットワーク」に変更を行うだけでトラブルが解決できることもあります。
- Windowsの設定→ネットワークとインターネットを開く
- 「パブリックネットワーク」or「プライベートネットワーク」を確認
- ネットワーク設定を変更する際には接続プロパティの変更をクリック
- ネットワーク欄のプライベートにチェックを入れる
ここに原因がある時にはすぐに問題が解決されます。
3.ファイル共有のプロトコル・SMB(Server Message Block)を確認→SMB1.0設定が無効になっていたら有効へ
SMB=Server Message Block(サーバメッセージブロック)はファイル共有のプロトコル・通信プロトコルの総称のことで、Windows環境でネットワーク(LAN)を通じてプリンターやファイルの共有などで使用されています。Windows10や11のパソコンではSMB1.0は規格が古く、セキュリティ面を考えるとリスクがあるため初期設定・デフォルトでSMB1.0が無効になっています。(Windows10や11の標準設定はSMB3.1.1です。)古い機種の場合はSMB1.0のみ対応していることもあります。SMB1.0を有効にすることでトラブルが解決されることもあります。
・SMB1.0を有効にする手順
- コントロールパネルを開く
- 検索ボックスを開く→機能と入力→プログラムと機能欄のWindowsの機能の有効化または無効化をクリック
- Windowsの機能欄→SMB1.0/CIFSファイル共有のサポート部分のチェック欄にすべてチェックを入れる
- パソコンを再起動→SMB1.0が有効適応になります。
※3の項目でSMB1.0/CIFS ファイル共有のサポート・SMB1.0/CIFSクライアント・SMB1.0/CIFSサーバー・SMB1.0/CIFS自動削除の4項目。SMB1.0と記載があるものはすべてチェックしましょう
※上記2.3の方法(設定の見直し)でファイル共有やNASに入れない・接続できない・中身が見られない・消えたといったトラブルが解決できる事があります。
4. Functionから始まるネットワーク関連サービス(Windows10、11のサービス)の設定を変更
上記までの方法を試してみて改善が見込めなかった際には下記2種類のサービスの設定を変更すると解決できることがあります。
- 4-1.Function Discovery Provider Host(FDPHOST サービス)
- 4-2.Function Discovery Resource Publication(FDResPub)
Function Discovery Provider HostとFunction Discovery Resource Publicationこの2つのサービスはネットワークの探索と検出に関するものです。自動で起動に設定を行うと問題が解決できる時があります。
・Windowsサービス設定変更の方法
- スタートメニュー→サービスを入力して検索
- サービス項目の中からFunctionで始まる文言を探す(Function Discovery Provider HostとFunction Discovery Resource Publicationが見つかるはずです)
- Function Discovery Provider Hostサービスを右クリック→プロパティを開く
- スタートアップの種類:自動をクリック→適応をクリック
- Function Discovery Resource Publicationサービスを右クリック→プロパティを開く
- スタートアップの種類:自動をクリック→適応をクリック
- Function Discovery Provider HostとFunction Discovery Resource Publication2つのサービス設定の変更ができたらパソコンを再起動しましょう。
5.IPアドレスを固定(競合している場合は解消しましょう)
IPアドレス(Internet Protocol address)とはインターネットに接続されたパソコンやスマートフォンなどの機器に割り振って判別するための番号のことです。IPアドレスが競合してしまうと競合が起きているパソコンがネットワーク上から見えなくなる・インターネットにアクセスできなる・ファイルの共有ができなくなるといったことが生じることがあります。NASに接続するパソコンの台数が多い場合にはIPアドレスは固定しておいた方が良いものです。
・IPアドレスの固定方法
- コントロールパネル→ネットワークとインターネットをクリック
- ネットワークと共有センターをクリック
- アダプターの設定の変更をクリック
- IPアドレスを固定したいアダプターを選択(有線接続:イーサネット・無線接続:Wi-Fiアダプター)して右クリック→プロパティを開く
- インターネットプロトコルバージョン(TCP/IPv4)をクリック→プロパティを開く
- 次のIPアドレスを使う欄にチェックを入れる→値を入力
- OKを押してIPアドレスの固定作業が完了します。
6. Windowsを最新の状態に(Windows Updateを行う)
Windowsが最新の状態になっていることも大事です。不具合を感じた時にはWindows Updateが最新のものかもチェックしましょう。